本研究班について
超高齢化社会を迎え生産人口の減少が進む日本社会においては、様々な困難を抱えながらも仕事を両立できる社会を構築することが大変重要になっています。その一つが、治療と職業生活の両立です。
働く人が抱える病気は、その種類も程度もそれぞれで異なるため、治療を続けながら仕事が続けられるように職場での配慮を行うためには、主治医から事業主や産業医を含む担当者に、病状や治療状況、業務上の注意などについて情報や意見が提供されることが必要です。しかしそこには、職種や職場環境などの職場側の事情、情報のやり取りの内容や方法、プライバシーへの配慮など、様々な課題があります。そこで、私たちは、研究班を立上げ、病気の種類と職場側の状況を勘案した治療と職業生活を両立するための主治医と事業場間での情報交換のあり方とその有効性に関する評価・検討を行うとともに、主治医、事業場(産業医等)、患者(就労者)の3者が関わる「両立支援システム」の提言およびそれを可能とする「両立支援パス」の開発を行いました。
研究の実施に当たっては、多数ある病気のうち、急性期治療と急性期リハビリを経て、退院後も通院治療が必要な病気であり、職場復帰後もリハビリを含む治療継続が必要であるという共通点を持つとともに、治療状況や心理状態が就労に大きく影響する「がん」、心肺機能や治療内容が就労に大きく影響する「循環器疾患」、四肢の運動機能が影響する「脳卒中・骨関節疾患」を対象としました。一方、事業場側の要因として、規模によって産業医の選任等の健康管理体制に大きな差異が生じるため、企業規模によって生じる健康管理体制の違いを想定して、主治医に求める情報の内容等について検討しました。
このたびWebページを開設して、平成26年度から28年度の3年間にわたる研究の成果を中心に公開することにした。今後、関連した研究の成果が出ましたら、情報を追加していくことを考えております。参考にしていただくことともに、みなさまから広くご意見、ご協力を賜ることができれば幸いです。
研究代表者
産業医科大学産業生態科学研究所産業保健経営学教授
森 晃爾