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 採血事故の予防と対策について

  1. 採血事故とは


 採血事故とは、健康診断における採血によって受診者に内出血、神経損傷、転倒などによる傷害が発生することを指します。採血は人体に侵襲を伴う行為ですが、巡回健康診断の場は基本的に健康人である受診者を対象としていることから、そのリスクは可能な限り小さくしなければなりません。


 
 2. 巡回健康診断における採血事故の特性


 巡回健康診断の場は臨時に開設される会場であることが多く、短時間に多くの受診者が集中することも少なくありません。これらのことは、採血や受診者の待機のためのスペースをとりづらい、時間に追われての作業になるなど、採血事故に結びつきやすい要因となるため注意を要します。また、巡回健康診断は健康診断機関の所在地から離れた会場で行うことも多いため、事故発生後の処置を依頼する医療機関をどこにするか、またその連絡方法も検討しておく必要もあります。

 
 3. 採血事故を防ぐために


 採血事故には、針が血管を傷つけることによる内出血や血管損傷、神経に触れることにより起こる神経損傷、痛みや緊張等による迷走神経過反射、転倒等が考えられます。また、受診者が汚染された針・真空採血管、消毒薬などで感染症やアレルギー反応を起こす可能性も念頭におく必要があります。
事故を防止するためには、採血者が上腕の血管・神経走行を熟知し、採血手技について十分な訓練を積む必要があります。また、採血などを行う場所は作業しやすい配置とし十分スペースをとり、採血を行う職員が余裕を持って作業できるような健診計画を立てるなど、事前の準備にも工夫をしましょう。
採血業務に従事する際には、受診者の不安を和らげるような、親切で丁寧な接し方を心がけましょう。
実際の採血では、受診者の取り違えを防ぐため、必ず氏名を確認します。また、過去に消毒薬(アルコールなど)での皮膚発赤や採血による気分不良、痛みや腫れなどがなかったかを確認します。次いで採血しやすい姿勢をとっていただきます。椅子は気分不良等があっても転倒しないよう、背もたれのあるものを選びます。採血は通常利き腕を避けて行いますが、受診者の希望をよく聞きましょう。穿刺する前に上腕動脈の位置を確認し、誤穿刺を避けるようにします。
真空採血管を使用する場合には、採血管の中の血液が逆流しないよう、駆血帯は採血管をホルダーから抜いた後にはずすようにします。また、ホルダーは血液での汚染が考えられるため、受診者ごとに取替える必要があります。
採血終了後の止血が不十分であるために皮下出血を生じる例は多いと思われます。もまずに5分以上確実に圧迫止血するよう受診者に確実にわかりやすく伝えます。止血帯を用いるのも良い方法ですが、この場合は受診者ごとに交換するようにします。

 
 4. 採血事故が発生したら


 腫れ、痛み、しびれや気分不良などが発生したら、当日責任者に報告するとともに、直ちに健診医師の診察を受けさせます。医師はそのときの状況、血腫の広がりや痺れの部位、意識状態など症状を記録するとともに、必要な措置について指示を行います。
内出血や腫れ・痛みの場合は動脈性出血の可能性があるため、穿刺部位を5分以上圧迫止血します。気分不良などを起こした場合には横臥位とし、下肢を挙上する姿勢をとらせます。