類型とは?
就業判定には労働者の仕事を制限することが含まれるため、中立性、科学的妥当性、安全配慮、人権への配慮など高度な判断が必要とされます。しかし、産業医が実施する就業判定について、適用範囲や、その内容、判断基準など共通の認識が存在しているとは言えないのが現状です。
そこで、本研究班は、現在実施されている就業判定の実態から、就業判定の類型化を行い、5つの類型があることを示しました。
※参照:産業衛生学雑誌 2012; 54 (6): 267–275
「産業医が実施する就業措置の文脈に関する質的調査」(PDF)
(本研究班 藤野善久ら著)
類型1:仕事が持病を悪化させる恐れのある場合の就業配慮
特徴
類型1は、就業が労働者の健康や疾病経過に悪い影響を与えると予見される場合に実施される措置です。この類型は、労働安全衛生法、および労働安全衛生規則第六十一条にある「就業で病勢が著しく増悪する」際に実施される「病者の就業禁止」の考え方に基づき、就業禁止だけでなく、就業措置全般への適用を意図するものです。この措置を講じる際には、臨床的な判断が必要と考えられます。
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具体例
・心不全のある労働者に対して過度な重筋作業を禁止する
・重度の高血圧未治療者に対して、深夜勤務を禁止する
・腰痛のある労働者の重筋作業を禁止する
・職場不適応によるメンタルヘルス不全者の配置転換を行う
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類型2:事故・災害リスクの予防
特徴
ある特定の疾患によって特徴的に発症確率が高まるとされる事態が生じた際に、随伴して発生する可能性のある事故を予防する目的で就業制限を行います。特に突然死や失神などの意識障害が併発するような疾患に適応されます。また,疾患に関連して生じる可能性のある災害、事故、大規模災害などに備えるための企業リスク管理としての観点を含むものです。
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具体例
・てんかんのある労働者の運転作業を禁止する
・糖尿病コントロールの不良の労働者の高所・暑熱作業を禁止する
その他の類型2の具体例はこちら
類型3:健康管理(保健指導・受診勧奨)
特徴
労働者の受診や生活習慣の改善を促すために、就業制限を適用する場合もあります。特に労働時間など就業環境が受診の阻害要因になっている際に、これらを調整して受診を促す必要があります。労働安全衛生法に基づく、保健指導実施義務を明示的に実施する措置です。
健診結果による就業制限のコンセンサスはこちら(PDF)
具体例
・高血圧を放置している労働者に対して、運転作業の禁止や残業禁止を適用して、受診を促す
その他の類型3の具体例はこちら
類型4:企業・職場への注意喚起・コミュニケーション
特徴
健康上の問題が主に仕事内容や職場環境にある場合に、職場環境の改善や事業主への問題提起として就業制限を実施する場合があります。労働者への措置を取ることで本質的には職場への介入を意図していると解釈できます。
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具体例
・過重労働が頻発する職場で、高血圧の管理が不十分な労働者に一律、月45時間以上の残業を禁止する
その他の類型4の具体例はこちら
類型5:適性判断
特徴
健康上の理由や能力的な適性から業務を制限する場合の措置。
※類型5に関しては障害者雇用等の別の就業配慮も必要であるため、本サイトでは割愛します。